症状固定(治療の終了)について
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Column 症状固定(治療の終了)について
交通事故などでケガをした場合,治療によって次第に症状は改善します。しかし完全に元どおりに治りきらず、これ以上治療を続けても大幅な改善が見込めない状態になることがあります。この状態を症状固定といいます。
治療終了で損害全体の請求が可能に、後遺障害の等級が損害額の決定において重要
症状固定は治療が終了したことを意味し、その後の治療費や休業損害の請求は原則として認められません。その代わり、治療が終了することによって、今までと今後の損害の全体の金額を計算することができるようになり,損害全体の請求が可能になります。
具体的には、治りきらずに遺った症状が後遺障害(後遺症)と言えるほどのものか、その程度はどうかを公的な機関に認定してもらい、認定された後遺障害の等級によって、慰謝料や逸失利益(働く能力が低下すること)などの損害の金額が決まります。ですから、どのような等級の後遺障害が認められるかが、損害の金額を決める上で非常に重要です。
症状が固定したかの判断は医師の役割、治療が長期に続く場合は医師に確認を
本誌352号(5月30日発行)のQ&Aでお話ししましたが、治療が終了したか、つまり症状が固定したかを決めるのは相手の保険会社ではなく、医師の役割です。ただし、むち打ち症(頸椎捻挫)などでは、MRIなどの画像診断で異常がない場合、見た目では痛みがあるかどうか分かりません。そのため、医師から治療を終えるとの明確な指示がなく、長い期間治療が続く場合があります。
しかし、たとえばむち打ち症で1年間以上通院しても痛みが続く場合、これ以上治療しても筋や神経の機能が回復するとは考えにくく、既に症状固定している可能性が高いと言えます。あまりに長期間治療が続く場合、医師に治療の必要性を確認したり、別の病院で診断してもらったりする必要があるでしょう。
十分な治療を受けることは非常に重要ですが、一方で症状固定することで初めて全体的な損害を請求できるようになることも忘れてはいけません。症状固定のことで悩んだら、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
(平成25年7月25日掲載)
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