高次脳機能障害
交通事故で頭部を強くぶつけたりする(頭部外傷)と、高次脳機能障害と呼ばれる後遺障害を発症する場合があります。頭部外傷による脳挫傷、脳出血、びまん性軸索損傷などが、高次脳機能障害の原因となるためです。
高次脳機能障害とは、頭部外傷等によって脳の機能が損傷を受けて脳がうまく働かなくなり、日常生活や社会生活が困難になる障害です。
主な症状としては、うまく話したり相手の話を理解することができない(失語)・うまく道具を使えず、行動がぎこちない(失行)・人の顔が分からない(失認)などのほか、物事を忘れやすい(記憶障害)・集中力が続かない(注意障害)・計画が立てられない(遂行機能障害)・感情のコントロールができない(社会行動障害)などがあります。
重度の高次脳機能障害であれば、寝たきりに近い状態になり、介護が必要になる場合もあります。
また、外見からは特に異常がないとしても、言語・思考・記憶・学習等の能力が著しく低下したことにより、日常生活や社会生活に支障を来たすことがあります。以前のように手際よく仕事や家事が行えないことで、本人はつらくて悔しい思いをしますし、感情のコントロールができなくなることで、本人を見守る家族にも多大な負担がかかることが多いです。
高次脳機能障害の診断は、①MRIや脳血流などの画像検査に加えて、②脳波検査、③神経心理学的検査、④問診や行動観察、⑤運動機能障害の診察などを総合的に判断して行われます。
ですから、まずは①画像所見に異常がなければ高次脳機能障害は認められませんので、事故後なるべく早期に専門医の診察を受け、脳のMRI画像などを撮ってもらう必要があります。
また、画像所見に異常があるだけではなく、行動や運動機能といった行動面に問題が生じている必要があります。家族の方は、本人の行動が事故前と変わっていないか、何がどのように変わったのかを注意深く観察することが必要です。
事故前と比べて変わってしまった本人と向き合って現実を見つめるのは、とてもつらいことだと思います。ですが、本人のためにも大切なことですから、目をそらさずにしっかり向き合いましょう。
「事故前と比べて何だか様子がおかしい、、、」と被害者自身や家族が感じた場合、実は脳に傷害を負っている可能性がありますので、直ちに診察を受け、高次脳機能障害に詳しい弁護士にご相談下さい。
高次脳機能障害の認定基準は以下のとおりです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
1級1号 |
身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介助を要するもの |
2級1号 (要介護) |
著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲な自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの |
3級3号 | 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、 円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
5級2号 | 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
7級4号 | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
9級10号 | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの |
高次脳機能障害について、山陽新聞レディアに掲載した記事はこちらをクリック。